中でも一番最近読んだ、『デンデラ』(佐藤友哉)が大変気に入った。
そもそもこれは、これとは違う本を探しに何となく立ち寄った書店で偶然目に留まった作品であった。
一度は「また今度にしよう」と購入を見送ったものの、帯がカッコよすぎたのと、棄老という残酷に惹かれてしまい、手元の本を消化し次第、書店へ駆け込んでいた。
ぐぐってもらえれば分かるのだが、姥捨山の続き、もっと突っ込んだ言い方をすれば、「羆 VS BBA50」の物語である。
『村』には「70歳を迎えた老人を山へ捨てる」しきたりがあった。
主人公斎藤カユは今年で70。慣習通り息子に背負われ、極楽浄土へ旅立つために『お山』へ入った。
冬の『お山』は極寒の死の世界。
老いた体はすぐに冷え切り、意識は朦朧としていく。
しかし彼女は助けられた。以前『お山』へと、同様に捨てられた老婆達によって。
『お山』を挟んだ村と反対側には、死んだと思われた老婆による集落「デンデラ」が形成されていた。
創始者は30年前に『お山』に入った三ツ屋メイ。彼女は今年で100になる。
「村に復讐する」という一心でゼロから作り上げた、老婆達の隠れ里であった。
そして斎藤カユの加入で丁度50人。
明日にも村へ襲撃をかけようという最中、飢えた羆の襲撃を皮切りに、「デンデラ」に大きな災厄が降りかかる。
先述の通り、老婆集団によるサバイバル小説である。
これはもうね、ラノベだね。解説でもそんな事言ってた。「老婆という性的能力を欠いた――即ち『萌え』要素を排除した――キャラクター達によるラノベ。
大体リーダー100歳よ?ここまで生き延びたってのがすでに荒唐無稽な上に、厳しい環境でババアだけで家作ったり狩りしたりでコミュニティを作っちゃうっていう。おまけに羆とまで戦うとか、どんだけ最強ババアだよ。
でもそれでいい。むしろそれがいい。
この作品にみみっちいリアリティは必要ない。
姥捨というジワリとした残酷譚、そしてバタバタ死んでいく登場人物。
これだけでもうおいしいでないの。
一度死んだ人間達の「死にたくない」という懸命の願いからくる必死の生き残り作戦、それを裏打ちする「誇り」も美しい。
萌えはないけど激しく燃えた。
昨年映画化されてるようなので、こちらも早く鑑賞したいところ。
猟師の嫁、浅見ヒカリが「狩猟のエキスパート」という「女は平常山に入っていけないはずでは?」というツッコミ所のある改変等されているようだけれど、これは正解。だってラノベだもの。
出演も豪華だよ。浅丘ルリ子に草笛光子、倍賞美津子に山本陽子。
ベテランの寿司詰めだよ。
問題は我が家のPCのDVDドライブが、何の問題か開かなくなってしまった事、これにつきる。
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